まちと里山が近いからできる「農的暮らし」【前田渉さん・奈穂さん(さんだオーガニックアクション副代表)】

更新日:2023年01月30日

前田さん_顔写真

自然の循環の中で、できることは自分たちの手で

奈穂さん 私は神戸から三田へ引っ越してきました。大学時代から有機農業に興味を持ち、卒業後は会社勤めを経て京丹後市の農場で、有機農業の研修を1年半受けました。

渉さん 都会で生まれ育った2人が和歌山のみかん収穫アルバイトで出会い、三田で暮らすようになって一緒に自然の循環の中で自分たちで作れるものは作り、直せるものは直す、そんな暮らしを始めました。

奈穂さん その基本が自分たちでつくるオーガニックな野菜やお米です。自転車で5分ほどの場所にある農地を地元の方から借りて野菜づくりを始めました。作業小屋は彼の手造りです。

渉さん 小屋の材料は有るものを使い、買ったのは水栓器具ぐらいかな。彼女が作付け計画を立て、化学肥料は一切使わず、枯草や落ち葉が天然の肥料になります。肥料の輸入価格が暴騰しても全く影響はありません。

奈穂さん 初めの頃は肥料が足りないので、枯草を積んでいる農家さんを見かけたら声をかけ、「その草をいただけませんか?」と。

渉さん 農薬も使わず、草や虫、微生物など、いろんな生き物たちの調和がとれた土・環境を作ることをめざしています。例えば、テントウムシは小さな害虫を食べてくれます。

奈穂さん 野菜に良くない虫を見つけたら、柵の外の草むらにポイっと放り投げます。もちろん失敗して収穫できない作物もあります。今年の夏、「ピーマンと胡瓜が全然採れない」と話したら、友だちの農家さんあちこちから届きました。大豆も失敗しましたが、作っている農家さんの収穫を手伝い、分けてもらって今年もお味噌を仕込む予定です。

前田さん_農作業の様子

温かく受け入れて、応援してくれる

奈穂さん 「米づくりをしたい」と話していたら突然、お世話になっている三田の農家さんから「田んぼ、空いてるよ」と電話がかかってきて、何も分からない私たちに機械を入れる代かきから、脱穀・もみすりまで全部教えてくれたんです。

渉さん 「みんなで田植えと稲刈りをしよう!」と呼びかける田んぼイベントには、興味を持った若いファミリー層を中心にたくさん集まってくれています。

奈穂さん ここ「屋敷町」は古くからの住宅街で、この古い洋館は私のひいおばあちゃんが亡くなって十数年間空き家になっていたので私たちが住むことにしました。近所には一人暮らしのお年寄りもいるし、駅近で便利なのでファミリーも増えてきています。すぐ裏にあるNPO法人が運営する宅老所で地域の人が集まる食堂をやっていて、「作ったお米とフードロスを食材に使って私たちもやりたいんです」と話したら「うちでやればいい」と、フードロスの提供先まで紹介していただきました。

渉さん 場所を提供してくれたり、高くてとても買えない農機具や軽トラを貸してくれたり、三田の地域の方々は、いつも私たちのやりたいことを応援してくれます。三田のまち全体が応援のかたまりです。

前田さん_自宅外観

移住者と地域の人たちのつなぎ役

奈穂さん 「移住」というと「山奥に住み、農業をする」。そんなイメージがあると思います。そこまで振り切った決断はできなくても、三田はまちと里山が近いから気軽に「農的暮らし」ができます。移住を考えて相談に来る人たちに、私たちの暮らしを参考にしてもらえたらいいですね。

渉さん 新規就農したい若者もたくさんいます。家庭菜園をしたいファミリーや生きがいとして農業をしたいシニアの方など、仲間が増えるといいなあ。畑や田んぼをしたい仲間、三田市にてお待ちしています!