子どもたちも参加してくれる 楽しい農業をやりたいと脱サラ、就農【今枝宏治さん・美鈴さんご夫妻(イマエダファーム)】
農業の師匠との出会い
宏治さん 三田の工業団地テクノパークに転勤になり、ウッディタウンの社宅に住むことになりました。ずっと「農業をやりたい」と思っていたので、同僚にそんな話をしたら「うちに手伝いに来る?」と誘ってくれました。やってみるとやっぱりすごく面白くて、本格的にやってみたいと思うようになったのですが、妻は…。
美鈴さん 夫が「農業をやりたい」と言い始めて5年ぐらい経っていたんじゃないでしょうか。ある年に群馬県にある私の実家に帰省したときに父に相談しました。すると、父が子どもの頃、祖父が農業をしていた話を聞かせてくれました。私は祖父が農業をしていたことをそこで初めて聞いたので、とても驚きました。私が物心ついた時には、離農していて畑もなかったし、そのような暮らしをしていなかったので。体力に自信があるほうではないので、自分が農業をしている姿が全く想像できなくてとても不安がありました。
宏治さん 子どもたちを連れて三田市や神戸市北区の親子自然体験に参加するようになってから、私よりも妻と子どもたちのほうが土に触れる機会が多くなって、どんどんハードルが下がっていったようです。
美鈴さん 農作業をしたり、自然と触れ合って虫を見つけたりしている子どもたちの様子を見ていると、とても楽しそうだし、私自身も楽しくなってきたんです。夫は「農業をやりたい」とずっと言っていました。そのうちにやりたいことを私が反対し続けるのも申し訳ないなという気持ちが出てきて、色々考えた結果「応援しよう」という結論に至りました。
宏治さん 就農先を探すようになってから紆余曲折はあったけれど、私にとっての師匠、「おおにし農園」の大西則和さんに出会えたのが大きな力になりました。脱サラして農園で研修させてもらってから、大西さんを通じて紹介いただいた農家さんから農地を借り受けることができ、独立しました。
珍しい野菜を少量多品種栽培から始めて
宏治さん 新規就農から5年間給付金を受けられたこと、新規就農時に三田市からの補助金で農機具を買えたことは本当にありがたかったです。独立後も師匠から教わった少量多品種の路地栽培をやっています。JA兵庫六甲の直売所「パスカルさんだ」が近くにあるので、その日とれた野菜に自分で売値を付けて出して、それが売上げの9割以上を占めています。始めは、珍しい野菜を少量多品種で作っていましたが、今は「珍しい」ではなく「美味しい」と思った品種に少しずつ変わってきています。私達がおススメする美味しい野菜をお客様に提供できればと思っています。そして、一緒に「美味しい」と共感してもらえたら嬉しいです。
美鈴さん 私も一緒に農作業をしているので、土日は子どもたちにお留守番をしてもらうことが多くてちょっと可哀そうですね。収穫や草刈りなど自分たちから「やりたい」と言う作業は楽しんでやってくれます。
宏治さん 美味しい野菜を作りたいという一心です。有機栽培や、農薬や化学肥料を使う慣行農法、それぞれの良いところを取り入れつつ試行錯誤しながら栽培しています。
美鈴さん 採れた野菜を子どもたちと食べて、そのあとも(美味しさの)余韻に浸りながら「あの野菜、美味しかったね~」と話したりします。夢中で食べている様子を見ると嬉しいですね。
季節の変化に癒され、ホッコリ
美鈴さん 小学校は、三田市で最も歴史のある三田小学校で、自由な雰囲気の中でのびのびしています。クラス名は松、竹、梅、桜。「ぼく、竹、竹、梅だった」「わたしは梅、松、梅」とか、ここで育った子どもたちにしか通じない話題が面白くて。子どもたちは三田で育つ「三田っ子」ですが、こんな日頃の会話も大人になってからいい思い出になるんじゃないでしょうか。その他にも外から来たからこそ他にはない三田の良さ、魅力を感じています。
宏治さん 米作りをする兼業農家が多い地域なのであまり交流の機会はないのですが、新規就農者も多くJA兵庫六甲の青年部でも新規就農者が半数近くを占めています。三田市主催の秋の「農業まつり」やいろいろなイベント、地域のお祭りにも参加して同じ立場の者同士で交流をしています。
美鈴さん 特別なことではなく、ごく日常的に触れる季節ごとに変化する景色や出来事に癒されホッコリします。畑もそうですが、ちょっと気分転換に出掛けると三田市内には良い場所が沢山あるなと感じます。市内に点在する並木道だったり自然豊かな公園だったり。洗濯物を干しつつ目に入ってくる朝焼けや夕暮れにちょっとホッとできたりと、何気ない日常の景色にふと癒される瞬間が三田には多いです。逆に今まで見たこともない虫が出てきてびっくりしたり、キジやイタチに出会ったり、畑にヘビが出て捕まえてみたり、刺激的でもあります。三田で暮らすうちに、「元々、自然や生き物が好きだったんだ」と気づきました。ただ慣れただけかもしれません。子どもたちにとっても「懐かしい」と思える故郷の風景になるといいなと思います。
宏治さん 日々の出来事や作業風景、収穫した野菜などをインスタに投稿しています。「面白い」と言ってもらってはいるけれど、農業の楽しさをアピールできているかなあ…。「イマエダファーム アンド サンズ」は、子どもたちも喜んで参加してくれる農園にしたいと思って名付けました。それぞれにやりたいことがあるから引き継いでくれるかは分かりませんが、今のところ畑の作業や美味しいものを楽しんでくれているようです。十分な収益はまだまだですが、美味しい野菜づくりにこれからも挑戦していきたいと思っています。
更新日:2022年12月28日